(photo by Chris Saunders via New York Times)
アフリカ、誰しもちょっとして憧れありますよね。草原やサバンナ、動物たち、広大な自然に肌の黒い人たちが叩くパーカッション、上半身もしなやかに使って激しく踊る人たち……
あれ、でも、少し待ってください。
「アフリカ」には54もの民族、約2000種類もの言語があるといいます。ちょっと世界地図を思い出してみれば、日本とは比べ物にならない広さですよね? 当然、多種多様な文化があるわけで、それはダンスも同じ。
例えば伝統的な「アフリカン・ダンス」でも国や地域で本当に違っています。そのなかから、今回は日本でも一部のダンサーにはなじみがあるスタイル、南アフリカのpantsula(パンツーラ)を紹介します。
パンツーラは主に足を地面につけたまま動かすステップを、グループでそろえて見せるのが中心のダンス。1980年代にKwaito(クワイト)と呼ばれる音楽で踊るのが流行ったと言われていますが、1950年代にそのルーツを求める記述もあったり、さらに歴史を辿ることもできそうです。日本のダンサーの一部ではその昔、「17歳」という仮名で呼ばれるNHKドキュメンタリー映像が流通していまして、街中でパンツーラを踊る少年たちが紹介されていました(私信:お持ちの方、誰か動画アップしてくださいー)。
そのパンツーラ、南アフリカと言う国自体が激変しているだけにずいぶん状況が変わっているようです。まずはソウェトの3人組、Skeleton movers of Sowetoの2012年の映像。
続いて2013年、パンツーラとハウス・ダンスをつなげてみるというイベントのリハーサル風景です。
この映像で面白いのは、手をたたき、口笛を吹き、掛け声をかけて踊るというパンツーラの特徴がわかりやすいこと。もともと街角で音楽をかけるプレイヤーがなくても、みんなで音楽を作って踊るというのがよく分かります。
音楽のクワイトが2008年頃に世界的に注目を集めたこともあってか、そのダンスであるパンツーラも人気となり、かなり商業的な見世物として成功しつつあるようで、グループごとの露出やカンパニーの結成、イベントでのステージ・ダンス(南アフリカのヨハネスブルクで行われたコンテンポラリーダンスイベントの映像(2015)や日本人ダンサーのYoshie、Hiro、Tatsuoがパリでパンツーラ・ダンサーのVusiと共演している動画なんていうものもあります)など、方向性が変わるに従って見せ方も変わってきていますね。アクロバットや組み体操的なルーティン、帽子のトリックなどエンターテインメントや驚きの要素が増えています。
先ほどのリハーサル映像にも出てくるダンサー、Real Actionsという人たちのダンス。こちらはカンパニーとして活動している様子。
1992年結成のVia Katlehongというグループは、ボディパーカッションなども取り入れたスタイルでのミュージカル公演をアメリカやフランスで成功させています。
ちなみにこのグループのVusi Mdoyiというダンサーは南アのソウェトで2010年から行われているSoweto Pantsula Festivalでも振付けを担当。”Stumbo Stomp”というパンツーラ・コンテスト番組でも振付けを提供するなどかなり活躍している様子。
引き続きパンツーラの注目度はどんどん上がっているようで、昨年にはアメリカの有力紙New York Timesが特集を組んでいます。この特集では、80年代に世界中に衝撃を与えたブレイキン映画『Beat Street』の影響でグループ同士がダンスを競うようになったと紹介されています。それにしてもここで掲載されたパンツーラ・ダンサーたちの表情、素晴らしいのでこちらもぜひ!! 彼らの間ではConverseが流行っているらしいのも面白いですね。
The New York Times South Africa’s Pantsula Dancers Bring Life to the Streets – New Yourk Times