artist: Beyoncé ( ビヨンセ )
song: “Run The World (Girls)” ( ラン・ザ・ワールド(ガールズ) )
choreographer: Frank Gatson Jr., Sheryl Murakami & Tofo Tofo( フランク・ギャトソン・ジュニア、シェリル・ムラカミ、トフォ・トフォ )
「最近のパンツーラ」紹介記事が予想外の反響を呼んでいるので、過去、最もポップな形で広くパンツーラが露出したであろうミュージックビデオをご紹介します。説明不要のビヨンセが、女性のために歌ったヒット曲“Run The World (Girls)”です。
このビデオの振付師は、長く彼女の振付けを担当してきたフランク・ギャトソン・ジュニアとそのサポートでシェリル・ムラカミ名義になっていますが、50秒すぎから始まるダンス・パートの一部はTofo Tofo(トフォ・トフォ)という2人組によるものです。
センターを占めるビヨンセの前に立ち、印象的なダンスを見せるこの2人、KwelaとXavittoが踊るのはパンツーラ。ですが、彼らは南アフリカ出身ではなく、その北東にある隣国モザンビークのダンサーです。後日公開されたドキュメンタリー映像によると、スタッフが4ヶ月がかりでトフォ・トフォを探しだし、ビヨンセのビデオに出演してもらうことになったとのこと。
アルバム”4″の制作ドキュメンタリーから、トフォ・トフォ登場部分
招聘のきっかけになったのは、ドキュメンタリーの中にも登場するこのビデオの様子。
トフォ・トフォの2人はビヨンセのツアーにも参加。
母国モザンビークでもコカ・コーラのバイラル映像やテレビ番組にも登場する人気ダンサーになっています。
トフォ・トフォやパンツーラに脚光が当たったというのはとても面白いですし、映像そのものもとても楽しめる作品ですが、ちょっと気になることもあります。
まず「パンツーラ・ダンサーの中でも南アフリカではなく、わざわざモザンビークのトフォ・トフォが招かれたのはなぜか」という点と「ビヨンセはアフリカ系アメリカ人とは言え、比較的新しいアフリカのダンスを取り上げることは、『文化の盗用』問題※に当たらないのか」ということです。ドキュメンタリーで彼らの背景を紹介しているのも、そういう部分への配慮もあるのかもしれないですね。この2つの疑問については、また改めて記事にしてみたいと思います。
※文化の盗用(culture appropriation): 日本ではあまり意識されませんが、ダンス界でもニュージーランドの振付師、Parris Goebel(パリス・ゴーベル)が創作について質問された時、振付けを流用しているダンスホール・レゲエのことを語らなかったことで批判を浴びたばかり。
過去記事もどうぞ。
>> 「ステップダンサーは無視できない? 南アフリカのパンツーラ」
>> 「[ Choreo / pantsula ] Sello Mondiga in “Let Me Go” by Branko」