「君はリンディ・ホップを知っているか?」

「知ってるって? それならFrankie Manning(フランキー・マニング)は? “Shorty” George Snowden(ショーティ・スノウデン)は?  Al Minns(アル・ミンス)は?」

リンディ・ホップ。Lindy Hopと書きます。ハウス・ダンスやUKジャズダンスのルーツのひとつでもある、最高にパワフルなダンスです。以前の記事にも載せましたが、まずはこの有名な動画を見てください。

ほっんとに楽しそうで強烈なバネのペアダンスですよね!!
こちらは“Hellzapoppin’”という映画のワンシーン。

Shorty Snowden & Whitey’s Lindy Hoppers

これを踊っているのが、フランキー・マニングもメンバーのWhitey’s Lindy Hoppers(ホワイティズ・リンディ・ホッパーズ)。彼らはNYはハーレムにあった伝説的なナイトクラブ、Savoy Ballroomで踊っているなかでこのダンス・スタイルを世に広めたグループです。Savoyはかなり大きなダンスフロアに2バンドが演奏できるようになっていて、バンド対決やダンサー・コンテストなども人気だったというクラブ。そのなかで次第にダンサーが人気を呼ぶようになり、Savoyの警備員だったWhiteyことHerbert “Whitey” White(ハーバート・ホワイト)がダンサーのグループをマネージメントするようになったのが、Whitey’s Lindy Hoppers。彼らはブロードウェイのステージ出演やヨーロッパ・ツアーまで行うほどの人気を獲得しました。

ちなみに彼らはリンディ・ホップ第2世代と言われるダンサーたちで、もっと初期のリンディ・ホップというと出てくるのがこの人、ショーティ・スノウデン。

Shorty George and unknown partner(映画“After Seben” 1929年)

チャールストンという、いまでも古典ステップのひとつとしておなじみのステップを含むペアダンス・スタイルですね。チャールストンはMinns & James(ミンス&ジェイムス)のこのビデオもおなじみです。


※このビデオは古く感じますが、実際には50年代以降のものとかで、↑のShorty Georgeなどより新しいんだとか。

フランキー・マニングは“Ambassador of Lindy Hop”と呼ばれるダンサーで、30年代当時、「キング・オブ・リンディ・ホップ」と認められていたショーティ・スノウデンと勝負することになってしまった時に、パートナーのFrieda Washington(フリーダ・ワシントン)と共にaerial(エアリアル、またはair step)と呼ばれるコンビでのアクロバットを初めて踊ったというダンサー。最初の動画の、こういうやつですね。
Untitled

このaerialを生み出した経緯については、マニングさんご本人が語っている映像がありますので、英語がわかる方はこちらをどうぞ。ユーモアたっぷりのお話で笑ってしまうこと間違いなしです(笑)。

リンディ・ホップからスウィングへ

その後、第二次世界大戦を経てジャズ・ミュージックが熱さではなくクールさが重視されるようになり、それに対応してリンディ・ホップはすたれてしまいます。一方でこのダンスが白人層に取り込まれて、より口当たりまろやか、というかほがらかなswing(スウィング)が広まったあたりは、アフリカ系アメリカ人が生んだRock’N’Rollが白人のロックや日本のロケンローになった歴史とも重なっていて、ほろ苦い感覚がなんともいえません。最近はヒップホップやEDM、トラップ・ミュージックでも似たようなことが起きていますしね。

しかしながら、YouTubeなどネット動画のおかげで、ちょっと前までは存在すら知ることが難しかった、こういった原典映像が、かなりきれいなクオリティで簡単に探せるようになりました。歴史にも触れやすくなったし、一方で昨日地球の裏側であった最新のバトル映像だって見ることができるおかげで、アイディアやノウハウには事欠きません。これを活かして先駆者に尊敬を忘れず、自分たちの踊りをどんどん作っていきたいですね。

ところで、こういうペアダンスって、いま踊れるの?

リンディ・ホップの楽しそうなところ。それはこのエネルギー、アクロバットだけじゃなく、そもそもペアダンスという点もありますよね。日本では社交ダンスや、より絞ったスタイルではサルサ、タンゴなどが長く人気ですが、最近芽が出てきているのがhustle(ハッスル)です。元々はディスコ・ミュージックで踊っていたペアダンスで、日本人のなかでも「Henry Linkがクラブで女の子たちをくるくる回していたダンス」と言うと伝わる人には伝わるかも?

東京ではGENKI、ZAB & ERIが“New Style Hustle”を広める活動をしています。昨年末には彼らのイベントにLinkも遊びに行ったようで、楽しそうな動画がアップされていました。

こちらもかなり気になりますね!

ABOUTこの記事をかいた人

とにかくクラブで踊るのが好き!という自分の趣味をそのまま仕事にしたライター、編集者、コーダー。 ダンス雑誌『Dance Style』(リットーミュージック、現在は休刊)で編集やDVDシリーズ9本の監督を務める。音楽方面では渋谷のナイトクラブshibuyaNutsで広報・メディア制作を担当。